ポートフォリオサービス導入にあたって、最も心配になるのが「何か起きた時にどうすれば良い?」というトラブルに対する懸念だ。
システム開発を自ら行うわけではないため、システムの根幹はブラックボックスであり、中がどうなっているのかをうかがい知ることはできない。仮に知ったところで対処のしようがないという教育現場がほとんどなので、ひとたびトラブルが起きてしまったら全業務が止まってしまうのではないかという懸念が生じても無理はない。
そこで、ポートフォリオを導入した後に考えられるトラブルを事前に想定し、その対処を知ることで懸念を解消したい。
eポートフォリオがITツールである以上、ハードウェアやネットワークなどシステム稼働に必要なインフラのトラブルのリスクは避けられない。システム提供側のサーバーやネットワークに障害が生じた場合、それを利用する教育現場のネットワーク障害など、ポートフォリオサービスを利用できなくなるトラブルは十分考えられる。
この場合、クラウド型サービスであれば、システムはサービス提供側の環境下で稼働しており、トラブルや障害が発生した際の復旧は事業者側の責任となる。つまり、サービス利用者側が何かをする必要はなく、これはもう一方のサービス利用者である学生も同じだ。
これは一般的なITサービスに共通する対応なので、新たに何か対応のための知識を持つ必要がないのはクラウド型サービスのメリットだ。
上記のようなインフラ的なトラブルとは違い、利用者側の問題にも光を当ててみよう。eポートフォリオなどITツールの導入で懸念される人的な問題として、デジタルディバイドが挙げられる。
デジタルディバイドとはITリテラシーの高い人とそうでない人の間で情報や利便性などの格差が生じてしまう問題で、eポートフォリオが本格的に導入され、稼働した際に年配の教員やITアレルギーを持つ職員、学生などが取り残されてしまう可能性がある。
これはeポートフォリオに限らず社会的な問題でもあるので、さまざまな解決策が模索されているが基本はシステムが使いやすいこと、ITツールであることを意識しないほど操作が直感的であることが解決の王道だ。
eポートフォリオは利用する年齢層やITリテラシーの個人差が大きい人を対象としていることが前提なので、こうした問題にはかなりの工夫が見られる。後は数ある製品の中からデジタルディバイドが起きにくいと思えるものを選びたい。
想定される人的なリスクにはもうひとつ、過度の依存という問題がある。eポートフォリオが便利であればあるほど利用者の依存度が高まり、それがなくても出来るようなことまでシステム内で完結しようとしてしまいがちだ。
時間的、距離的な制約なくコミュニケーションが取れるのはeポートフォリオのメリットだが、それが必要でない時間帯や距離の場合は直接人と人が関わるほうが良いのは言うまでもないことだ。
今も昔も、教育は人がやるものであり、学びの主役も人間なのだ。
eポートフォリオの導入後に考えられるシステム的なトラブルのほとんどは、サービス事業者が解決すべき問題なので、利用者がすることは基本的にない。むしろ懸念すべきは利用者の人的な問題で、デジタルディバイドやシステムへの過度な依存は導入前に意識しておくことをお勧めする。